頚椎椎間板ヘルニアの手術にはいくつかの方法があります。
目的によって大きく3種類に分けられますが、その中でもそれぞれの手術方法は特徴が異なります。
なるべく手術は行わずに改善したいところですが、どうしても必要な場合は特徴をよく比較して最適な手術方法を選びましょう。
痛みが完全に取り払えるかどうかに主眼を置いたり、入院期間や費用、術後の傷あとの大きさを重視したりと、個人によって判断基準はさまざまです。
ご自身の希望に沿う方法を検討し、主治医の方とよく相談して選ぶとよいでしょう。
目的の違いとそれぞれのメリット・デメリット
- 減圧手術
身体を切開することなくレーザーなどで椎間板の内圧を減らし、ヘルニアを元の位置に収める方法です。
<メリット>
切開しないので身体への負荷が比較的少ないです。
<デメリット>
中・高度のヘルニアには効果が無いことが多いです。
また高度な技術が必要で自由診療となるため、費用が高くなります。
目安は20万円~で、場合によっては100万円を超えることもあります。 - 摘出手術
はみ出した髄核の一部を切除して、圧迫されている神経根の負担を減らす方法です。
<メリット>
保険適応の手術が多いです。
<デメリット>
身体への負担がやや大きく、入院期間が長くなる場合があります。 - 切開手術
痛みの原因となっている椎間板を切開し、切除した部分にご本人の骨や人工骨を移植して患部を固定する方法です。
<メリット>
重度のヘルニア治療にも有効で、痛みが完全になくなる可能性が高いです。
保険診療が適応されます。
<デメリット>
高度な技術が必要とされます。
続いて、それぞれの手術方法について具体的にご紹介していきます。
1. 減圧手術
〘PLDD法(経皮的レーザー椎間板減圧術)〙
※PLDD・・・Percutaneous Laser Disc Decompressionの略
- 手術方法
髄核に刺したレーザーファイバーからレーザーを照射し、髄核を熱凝固収縮させることによって内圧を下げる治療法です。 - 手術時間:15分~30分
- 入院日数:日帰りも可能です。
- 健康保険:適応外
- メリット
軽~中度のヘルニアに有効です。局所麻酔のため身体への負担が少なく、日常生活への早期復帰が可能です。傷跡も小さく済みます。 - デメリット
健康保険非適応です。中~高度のヘルニアには効果がない事もあります。
〘PECD法(経皮的内視鏡下頚椎椎間板摘出術)〙
※PECD・・・Percutaneous Endoscopic Cervical Discectomyの略
- 手術方法
内視鏡を使用して直接ヘルニアを摘出し、レーザー光線で髄核の凹凸を凝縮・固定化させる治療法です。 - 入院日数:手術当日に入院・手術し、翌日退院が可能です。
- 健康保険:適応外
- メリット
痛みの強い大きなヘルニアでも、骨棘が顕著でなければ適応可能です。
90%以上の方に、首・肩・腕の痛みやしびれの軽減実績があります。
大きく切開しないので傷跡が小さく、神経への接触もないため術後癒着がありません。身体への負担が少ない手術方法です。 - デメリット
健康保険非適応です。高度な技術が必要です。
2. 摘出手術
〘LOVE法(後方手術、部分椎弓切除による椎間板ヘルニア切除)〙
- 手術方法
脊髄神経を圧迫している髄核を摘出する手術方法です。全身麻酔を行い背中側から5~6センチ程度切開し、目視下で腰椎の一部を切除します。なお、Loveは開発した医師の名前です。 - 手術時間:30分~1時間程度
- 入院日数:リハビリが必要な場合もあるため1~3週間程度です。
- 健康保険:保険適応(約10万円)
- メリット
保険適応のため、費用の自己負担が少なく済みます。 - デメリット
切開による身体への負担が大きく、回復に時間がかかるため入院日数も長めです。切開部分も5~6センチと大きいため合併症や後遺症のリスクがあります。
〘Micro Love法(顕微鏡視下椎間板ヘルニア切除術)〙
- 手術方法
上述のLOVE法と同様の手術を、目視下ではなく顕微鏡下で行います。 - 入院日数:10日程度
- 健康保険:保険適応(約10万円)
- メリット
顕微鏡を使用して患部付近を見るため、LOVE法に比べ傷口が小さく済みます。そのため身体への負担も小さく、入院日数も短くなります。
従来のLOVE法の技術で行えるため、こちらも保険適応です。 - デメリット
全身麻酔が必要になります。
〘MED法(内視鏡椎間板切除術)〙
※MED・・・MicroEndoscopic Discectomyの略
- 手術方法
約2cm切開し、内視鏡で観察しながらはみ出た髄核を切除する方法です。 - 手術時間:30分~1時間程度
- 入院日数:1~2週間程度
- 健康保険:保険適応(約25万円)
- メリット
傷口が小さいため身体への負担が少なく、入院も短期間で済みます。 - デメリット
保険適応ですが、高度な医療技術が必要なため費用は高めです。
内視鏡の画像を頼りに限られた視野で手術を行うため、ヘルニアの取り残しのリスクがあります。
〘MECD法(内視鏡下頚椎椎間板摘出術)〙
※MECD・・・MicroEndoscopic Cervical Discectomyの略
- 手術方法
MED法に準じた内視鏡を使用して治療する、比較的新しい手術方法です。 - 入院日数:4~7日程度
- 健康保険:保険適用
- メリット
傷跡が2ミリ以下と小さく、身体への負担が少ないため日常生活への早期復帰が可能です。また内視鏡下手術は切開範囲が小さいため、術後の頚椎変形の可能性が低いです。 - デメリット
非常に高度な医療技術が必要なため、手術可能な病院が限られています。
〘PN法(経皮的髄核摘出法)〙
※PN・・・Percutaneous Nucleotomyの略
- 手術方法
局所麻酔を行い患部付近に管を刺し込み、その管に通した鉗子(かんし)という器具を用いて、X線透視下(もしくはMR透視下)ではみ出した髄核を摘出します。 - 手術時間:30分~1時間程度
- 入院日数:0~2日程度。日帰りも可能な手術です。
- 健康保険:保険適用
- メリット
保険適用な上、身体への負担や手術時の痛みが少なく早期復帰可能です。 - デメリット
効果があまり見られず追加治療が必要になる場合もあります。
3. 切開手術
〘固定術〙
- 手術方法
全身麻酔を行い、首の前側を切開して痛みの原因となっている髄核や椎間板を全て切除します。その後、切除部に骨盤などから移植した骨や金属金具、人工骨などを入れ、椎体間を固定します。 - 手術時間:2~3時間
- 入院日数:5~7日程度。治療期間が長くなる場合もあります。
- 健康保険:保険適応
- メリット
痛みがなくなる可能性が高く、手術による改善を実感しやすいです。 - デメリット
高い医療技術が必要です。
〘椎弓形成術〙
- 手術方法
椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部位に切り込みを入れ、狭くなった脊柱管(せきちゅうかん)を広げる手術方法です。
頚椎椎弓形成術には正中縦割法、片開き法、椎弓切除法があり、患部の状態にあった方法を選びます。 - 手術時間:1~2時間程度
- 入院日数:1~2週間程度
- 健康保険:保険適応(30~40万円程度)
- メリット
痛みが完全になくなる可能性が高く、手術効果が実感しやすいです。 - デメリット
保険適用ですが、やや費用は高いです。
また術後の回復に時間がかかるため、社会復帰には3~4週間程度要する可能性があります。
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